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[ITO]

2016. 2. 7 - 8 千葉県房総半島東南沖の太平洋上でスプライト１４イベント．　新改造カメラの映像（その２）

　2016. 2. 7 - 8 　日本は移動性高気圧に覆われましたが，高気圧の縁にあたる南方海上ではあちらこちらに雨雲が発生．なかでも房総半島沖では次々と雷雲が発生して長時間にわたり雷を発生させました．１４イベントのスプライトが観測されました．

発生時刻：　
22:55:59　　　23:04:57　　　23:17:25　　　23:20:34　　　23:25:33　　　23:33:07　　　01:06:59　　　01:11:32
01:36:35　　　01:49:36　　　03:01:04　　　03:35:48　　　03:40:29　　　04:19:24
発生場所：　千葉県房総半島東南の太平洋上空

　今回も「ローパスフィルター No. 1を除去したDMC-GH4」と「ローパスフィルター２枚を除去したDMC-GH4」の両方で同じスプライトをキャプチャーし，ローパスフィルターの影響を調べました．
　カメラ：Panasonic DMC-GH4 レンズ：Nokton25mmF0.95 色温度：3500K（共通）

今回の感想は：
　ｰ 無改造のカメラと比べて「ローパスフィルター No. 1 除去カメラ」のスプライトへの感度はかなり良い．
　しかし「２枚除去カメラ」と比べると細部ではかなりの違いがあります．特にテンドリル（細かい根のような部分）やスプライト・ハローと呼ばれるスプライトの上空に現れる円盤状の発光は赤外線が大部分を占めているようで，「ローパスフィルター No. 1除去カメラ」ではほとんど写りません．無改造カメラ（ローパスフィルターが２枚入っている）では全く写らないかも．．．．

　ｰ スプライトの色については「ローパスフィルター No. 1 除去カメラ」の方が赤く映る．
ローパスフィルターを除去したデジタルカメラでは赤外線は白色，または薄いピンク色に写ります．
「２枚除去カメラ」ではスプライトに多量に含まれる赤外線がすべてCMOSまで届くので，スプライトの発色は赤外線の白〜薄いピンク色が支配的となります．
それに対し「ローパスフィルターNo.1 除去カメラ」では，カメラ内のローパスフィルター No. 2 がかなりの赤外線をカットするために CMOSへ届く赤外線が減少し，その結果可視光線である赤色が支配的になります．そのためにスプライトがより赤く映るのでしょう．

「２枚除去カメラ」の細部まで写ったスプライトはとっても魅力的ですし，「ローパスフィルター No.1 除去カメラ」が映し出すスプライトの赤色も捨てがたい．．．しばらくはこの２台体制で観測します．
ITO

[前田]

ＩＴＯさんへ
宮崎の前田です。いつも、テストレポート楽しく読んでいます。
今回の画像比較では、右側のローパス1枚のものの方が解像感が高い用に
見えるのですが、圧縮無しのオリジナルでは、左の方が解像度は高いんですよね。

写っている波長の違いはグレーティングがあれば、月などを撮れば、すぐに分かるのですが、
わずかな違いでスプライトの写りはかなり違うものですね。

[ITO]

前田さん，コメントをありがとうございます．

「ローパスフィルターすべて無し」（左）と「ローパスフィルター No. 1なし」（右）は解像度の設定（1920 x 1080p/59.94fps），カメラの機種（Panasonic DMC-GH4），レンズ（Nokton 25mmF0,95）等の条件を全く同じにして写した２つの動画から切り出したフレーム画像（1920 x 1080 pixels）です．
従って，異なるのはカメラの中に「ローパスフィルター No. 2 」があるかどうか，だけです．

　夜空の画像や動画を見てみると「ローパスフィルターすべて無し」の方がノイズが少なくて画像が安定しているように見えます．それで流星観測にはこちらの方が適しているように見えます（小さな流星がノイズに埋もれない，赤外域の光が多い流星には感度が良い，など）．
しかし，掲載した映像のように雷やスプライトが発光した場面では赤外線の量が急激に増えるため，赤外域の感度が桁違いに高い「ローパスフィルターすべて無し」カメラの映像の方が画面が粗くなり，ややノイジーに見えます．

スプライトの発光には赤外線が相当多く含まれる事が知られています，　出典の文献を見て下さい．
しかしながら，ローパスフィルターで赤外線をカットしているカメラ（無改造カメラ）ではスプライトの可視光線部分しか写りません．
「ローパスフィルターすべて除去」のカメラではすべての光がCMOSまで届くため，スプライトの発光が全部写りますが，その名前が示す「赤色」がかなり失われます．
そんな訳で，もしかしたら「ローパスフィルター No. 1 を除去したカメラ」では，スプライトの発光が（全部では無くても）相当部分写り，尚且つ「赤色」が残っている映像が撮れるかも？という虫のいい期待があったのですが，現在までの結果では期待が大きすぎたかもしれません．
もうちょっと続けてみたいと思います．
ITO
出典：http://fisica.ciencias.uchile.cl/alejo/thesis/node6.html#SECTION02300000000000000000