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2023. 7. 10 埼玉県北部の雷雲内での「青色発光現象（Blue Flashes）」　その１

7/10 埼玉県北部での雷雲において雷雲内での「青色発光現象（Blue Flashes）」が多数観測されました。

「雷雲内の青色発光現象」とは活発な雷雲で発生する青色の発光現象で、雷雲の内部で発生するため（ブルージェットやブルースターターとは異なり）雷雲を通過した「ぼやけた発光」、または「雲に反射した光」として観測されます。
雷雲内の正電荷荷域・負電荷域間の放電現象だと思われるのですが、その詳細や発生する原因はまだはっきり判っておりません。

光学的な特徴としては：
・雷放電とは関係なく、唐突に出現する（スプライトのように特定の雷放電を起源としない）。
・通常の雷雲内の放電は赤い波長を持っているが、「雷雲内の青色発光現象」は特徴的な青い波長を持っている。そのため、通常の雷放電と容易に区別する事が出来る。
・出現頻度が高く、多いときには１分間に６０回以上も出現する。
・単独で出現する場合が多いが、出現後 100ms 以内？に同じ場所から雷放電が発生するケースも見られる。

この現象は 2023. 7. 10 20:43 から 21:44 までの１時間に約 270 イベントが観測されましたが、出現頻度が高い 21:17:00 から 21:22:00 の５分間の観測結果（192 イベント）について詳細を調べました。

　出現時刻　　　　　　出現回数
　21:17:00 - 17:59 　　　　31
　21:18:00 - 18:59　　　　 66
　21:19:00 - 19:59　　　　 39
　21:20:00 - 20:59　　　　 49
　21:21:00 - 21:59　　　 　 7

今後「雷雲内の青色発光現象」の映像や発生場所、雷雲での出現位置などについて報告しようと思います。今回は「雷雲内青色放電現象」の映像の紹介です。
この項、続きます。
ITO

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2023. 7. 10 埼玉県北部の雷雲内での「青色発光現象（Blue Flashes）」　その２

1 青色発光現象の出現位置
UFO AnalyzerV4 を使って青色発光現象の中心と思われる場所の方位、仰角を求め、それを雷雲の映像にプロットしてみました。

図 -１は 21:18:00 から 21:19:00 までの１分間に観測された 66 イベントの青色発光現象の位置を雷雲上にプロットしたものです。
雷雲群の中央左側（高圧線の真上あたり）には高く盛り上がった（オーバーシュートした）ドーム状の雷雲があり、活発に発雷していました（雲頂高度 16.3 km）。
青色発光現象 66 イベントの内 55 イベントがこの活発な雷雲で発生しました。

2　青色発光現象の出現高度
出現時刻の雷雲の位置から、観測地点と雷雲間の地表距離を求めました（図２）。雷雲までの距離は 41.2km でした。
青色発光現象が同一線上に出現したと仮定して、ブルーフラッシュの高度を求めた結果は：

青色発光現象の出現高度
　・最も高かった出現高度　　　15.8 km
　・最も低かった出現高度　　　13.4 km　　　　
　・６６イベントの平均　　　　14.8 km　　　
また、この時の雲頂高度は 16.3 km でした（対流圏界面は 15,9 km 館野）。

3　雷放電をトリガーしたイベント数
青色発光現象には出現後数10ms - 100ms 以内に同じ場所から雷放電が発生しているイベントが 66 イベント中に 11 イベントありました。

以上の事より判明した事は：
・多くの青色発光現象は（オーバーシュートした）活発に発雷するドーム状の雷雲でその多くが出現した。
・同じ場所から繰り返し出現する事が多い（ランダムには出現しない）。
・出現高度は 13.4 - 15.8 km で、雲頂（高度 16.3 km）のやや下の狭い範囲で出現した。雷雲上部の正電荷域と負電荷域の間での放電と推測される（？）。
・雷放電をトリガーする？　海外の文献では雷雲内で発生するある種のコロナ放電（NBE 等）が雷放電の開始に関係しているのでは？との記載が多くありますが、もしかしたら青色発光現象も雷放電の開始に関係しているかもしれません。


雷雲中の青色発光現象（Blue discharge）については活発な研究が行われていますが、ほとんどが ISS（国際宇宙ステーション）からの観測結果を元にしており、地上からの観測例は僅かです。
また、多くの文献が青色発光現象と NBE（Narrow Bipolar Event 雷雲内で発生する双極性放電。VLF/LF 電波観測で観測）の関連に言及しており、さらに雷放電のトリガーリングとも関連付けています。

雷雲内の青色発光現象はブルージェット、ブルースターターと同じ分類の発光現象として扱われており、 このグループは新しい造語 BLUEs（Blue LUminous Events）と呼ばれています。
今後さらに研究が進めば面白いですね。
ITO